札幌家庭裁判所 事件番号不詳 判決
本籍 苫小牧市幸町十二番地
住居 勇払郡穗別村字穗別四十二番地
料理店業
河本為雄
大正十三年四月十七日生
主文
被告人を懲役六月に処する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人は勇払郡穗別村字穗別四十二番地に於てつるやと言う屋号で料理店を経営するものであるところ、
一、昭和二十八年五月十日頃○藤○代○(昭和十一年十二月二十一日生)を女給として雇入れ、同女が児童であることを知り乍ら同年十二月三日頃から同二十九年九月二十日頃迄の間右料理店に於て遊客多数を相手に売淫させ、
二、同二十九年三月初頃○橋○江(昭和十二年八月二十九日生)を雇入れ、同女が児童であることを知り乍ら、同月中旬頃から同年七月二十日頃迄の間同所に於て○田○明外氏名不詳の遊客多数を相手に売淫させ、
三、同年九月末頃○中○ぬ○(昭和十二年十一月二十五日生)を雇入れたが、同女が児童であることを知り乍ら、同年十月一日から同年十一月末日迄の間同所に於て遊客多数を相手に売淫させ
以て児童に淫行をさせる行為をなしたものである。
右被告人の所為は、
一、磯谷村長作成の○橋○江の戸籍抄本
一、富良野町長作成の○中○ぬ○の戸籍抄本
一、三笠町長作成の○藤○代○の戸籍抄本
一、○藤○代○の司法警察員に対する供述調書
一、証人○橋○江の当公廷に於ける供述
一、証人○中○ぬ○の当公廷に於ける供述
一、証人田中なつよの当公廷に於ける供述
一、証人菅原順子の当公廷に於ける供述
一、菅原順子の検察官に対する供述調書
一、○中○ぬ○の検察官に対する供述調書
一、被告人の司法警察員に対する昭和三十年三月二十九日附供述調書
一、被告人の検察官に対する第一、二、三回供述調書
一、押収に係る帳簿
を綜合して之を認む。
弁護人は、本件は被害者○藤○代○、○橋○江、○中○ぬ○等が被告人方に於て其の自由意思で淫行をなしたものであつて、被告人に於て同女等を強制して淫行をなさしめたものでないから、被告人には児童福祉法違反の責任はないと主張するが、児童福祉法第三十四条第一項第六号に謂う、児童に淫行をなさしめる行為には児童を雇入れるに当つて、児童に金品を供し、雇入れた後前借金の返還に求め、児童が窮地に陥つたのに乗じ淫行をすすめ、或は売淫の対価の分前を定人部屋寝具を提供して、売淫を容易ならしめることを含むものと解すべく、之を本件に付いて見ると証人○橋○江同○中○ぬ○の当公廷に於ける供述、○藤○代○の司法警察員に対する供述調書によれば、同女等は何れも被告人に債務があつて其の返還に窮して被告人と売淫の対価に付て其の分前を定め、其の提供した部屋寝具を使用して売淫した事実が認められるから、仮令被告人の暴行脅迫の行為によつて、淫行をするに至つたものではなくても、被告人の所為は児童福祉法に謂う児童に淫行をさせる行為をなしたものと謂うべきであつて、弁護人の主張は理由がない。
法律によれば、被告人の判示所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号第六十条に該当するが、右は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、所定刑中懲役刑を選択し同法第四十七条第十条に則り、犯情最も重い一の罪の刑に併合罪の加重をなした刑期範囲内で、被告人を懲役六月に処し、訴訟費用の負担に付ては刑事訴訟法第百八十一条を適用し、全部被告人に負担させる。
仍て主文の通り判決する。
(裁判官 大久保浩)